今回はキースイッチをちょこっと深掘りする回です。
短い記事になると思いますが、スイッチで使われる用語を理解しているとスイッチ選びが更に面白く、自分好みのスイッチを探す為にも役立つこと間違いなしなので、是非覚えていってください。
キースイッチの名称と役割
トップハウジングとボトムハウジングはステムを収納しておく箱で、ボトムハウジングにくっついている金属部分(リーフ)をステムの脚で押して導通させる事で入力をPCBに認識させます。
キースイッチに使われる素材
キースイッチに使われる素材には様々種類があり、素材によって出てくる音が変わってきます。
素材はスイッチの商品ページなどに記載されているので、そこからでもある程度音の傾向を理解できます。
今回もリニアスイッチを例に解説します。
ハウジングの素材
ハウジングに使われる素材は主にポリカーボネートやナイロンで、他にUHMWPEやPOM等の自己潤滑性の高いエンジニアリングプラスチックが使われたりします。
それぞれの素材で音も変わりますので、スイッチ選びの重要な要素になります。
打鍵時の音は主にボトムハウジングとステムの素材で決まります。(他にも様々要素はありますが)
音の感じ方は人それぞれで、更に素材が同じでもスイッチによって出てくる音が違ったりするので個人的な感想に過ぎませんが、ポリカーボネートは高めのカチカチとした音になり、ナイロン製は硬質で低めの音、POMハウジングはハッキリした高めの音。
UHMWPEのハウジングは少しプラスチッキーな独特の甲高い音を生成するように感じます。
ステムの素材
ステムの素材は主にPOMが使われます、独自開発なのかハウジングではあまり聞かないLYやP3といった素材もあります。
逆にナイロンやポリカーボネートはステムの素材としてはあまり使われません。
音の傾向はハウジングと同じでPOMはやや硬質、LYはやや低めでシャープな音
UHMWPEやP3は高めで柔らかい感じの音になる気がします。
上下ハウジングとステムの組み合わせ次第で色々音が変わるのがとても面白いです。
配合の違いなのか表記上では同じ素材でも製造元が違うと音も変わります。
ステムポールの長さ
ステムのポール部分の長さでも音の出方が変わってきます。
最近新しく出てくるスイッチはポールの長いロングポールスイッチが多いように思います。
そのおかげかスタビライザーもグラつきを抑えるためにロングポール版が発売されたりしています。
ポールが長くなるとハウジングにポールの先のみが当たり、ボトムアウトの音がよりハッキリと出てくるようになります。
13mmを超えてくるとロングポールと言って差し支えないでしょう。
個人的にはロングポールの方が好みなのですが、打鍵時に指に返ってくる衝撃が強かったり、単純に音が大きくなるので音を控えなければならない場所では少々使い辛い等、メリットもあればデメリットもあります。
スプリングについて
スプリングは打鍵時の押下圧を決めるパーツで、スイッチによって様々なスプリングが使用されていています。
スプリングの重さはもちろん、長さや、場所によって巻数の違う物、下に行くに連れて巻数が変化していくプログレッシブ等種類がとても多いです。
左からノーマル 14mm、ノーマル 17.5mm、2stage 22mm、3stage 22mm、プログレッシブ 16.35mm、これ以外にも様々種類があります。
基本的にスプリングが長くなっていくにつれて初動(押し始め)が重くなり、初動とボトムアウトの重さの差異が少なくなり、ステムの戻る力が強くなってキビキビした動作になります。
プログレッシブはある一点を超えた場所からいきなり荷重の変化が大きくなる面白いスプリングです。
”押下圧”の不思議
スプリングの重さの表記は色々あって混乱しがちです、”押下圧”と一言で言っても沢山の種類があります。
・押し始めの重さ(イニシャルフォース)
・キーが反応する地点の重さ(アクチュエーションフォース、オペレーティングフォース)
・底まで押し切った時の重さ(ボトムアウト)
重さの単位はg(グラム)で表記され、大体のスイッチはボトムアウトでスプリングの重さを表します。
スプリングは個別で売っていたりもしますので、スプリングのみを交換して自分好みの重さに変更することも出来ます。
スプリングを交換した際はしっかりラベルを張ったり書き込んだりして整理しておかないと上の写真のように何が何だかよくわからなくなります・・・
スイッチから出る音
- ボトムアウト
- キーを底まで押し切った時に出る音、底打ち音とも言われる。
- トップアウト
- キーが戻る時に出る音、大きいと少し気になる
- スプリングピン
- spring ping、キーを押した時にスプリングから出るキンキン音やシャリシャリ音
- リーフノイズ、リーフピン
- leaf ping、ステムの脚と金属部分が擦れる時に鳴るキンキン音
- スクラッチノイズ、擦過音
- ステムとハウジングが擦れて出るシュッシュッと言う擦過音や引っ掛かり感
悪い音に関しては殆どがルブで改善可能ですが、個体差なのかどんなに頑張っても除去できない事があります。
その場合はもう諦めてその音を受け入れるか、使用しないかの2択になります、ノイズが許容出来ないならば予め選別の為にスイッチは多めに購入しておくことをオススメします、必要数+10個ほど購入しておくと良いでしょう。
↓ルブについてはコチラの記事で詳しく解説していますので是非読んでみて下さい↓
Thock? Clack?
海外サイトや動画等でキーボード関連の情報を調べているとよく出てくるこの単語、どんな意味があるのでしょうか?
・Thock
由来まではわからなかったのですが、造語やスラングの類で「深い、コトコトした音」という意味です。
ピッチの低いタイピング音を表現する時に使われます、Deepが使われることもあるようです。
・Clack
コチラは真逆で「高い、カチャカチャした音」という意味、Clacky switchみたいな感じで使われることが多いです。
この単語がある場合はハイピッチの音と解釈してOK
他にもPoppyやCreamy等の曖昧な表現というか抽象的な表現も多く出てきますがこれは日本語?でも良く言われるポップやクリーミーと同じような表現と解釈して問題なさそうです。
marblyという表現もあり、コチラは大理石という意味のmarbleから来ていて、主にPE foamを用いた構成でよく使われます。
大理石の上をヒールで歩いた時のコツコツという音を想像するとわかりやすいかと思います。
他にも何か分かり次第加筆修正していこうと思います。
まとめ
”スイッチの音”と言ってもそれを決める要因は様々で、上下ハウジングの素材、ステムの素材、スプリング等色々な要素が複雑に絡んで1つの音を生成します。
同じことを何回も言うようで申し訳ないのですが、音の感じ方と言うのは100人いれば100人違う感想が出てくる物です。
自分でこんな記事を書いておいて言うのもアレですが、あまり他人の評価は鵜呑みにせずに参考程度に留めておいた方が良いでしょう。
ただ、音以外の評価は割と万人に共通する事が多いです、「引っ掛かりがある」とか「スプリングの音が気になる」、「リーフとの接点がキンキン鳴る」、「ハウジングが緩い」等は信用出来る評価だと私は思っています。
タイピング動画等も録音環境と再生環境によって如何様にも音が変わってしまうので、コチラも鵜呑みにはせずにあくまで傾向を推し量る参考程度に視聴した方が良いかと思います。
今回はスイッチについて少し深掘りしてみました、新しいスイッチが続々出てくる中、自分好みのスイッチを見つけるのは中々に大変ですが、素材や特徴について理解を深めておけば大凡の傾向は掴めるので覚えておいて損はないでしょう。
それでは今回はこの辺で、ここまで読んでくれてありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
写真や絵の中に赤字や赤線を入れないほうがいいですよ。
絵が見えなくなります。
ご指摘ありがとうございます。以後気を付けます!